選者:三原康裕
川上弘美さんの小説「離さない」のストーリーをデザインに落とし込んだそうですが、この作品には物語性うんぬんを抜きにして、大いに可能性を感じました。まず、体を覆っているにもかかわらず、オーガンディという透ける素材を使用することで、逆に人間の体を意識させています。とても難しいことをやっているのですが、構造がシンプルゆえに、その周りの空気や空間が際立って見えてくるんです。そして、ひたすら手作業で縫製するクチュール的な作業や、プロダクトとして軽いというのもすばらしい。頭だけで支えるという発想も、どうしてこれまで誰も気づかなかったのかと驚かされました。僕自身、新しさとは何かを考えることがあるのですが、阿部さんのデザイン性とプロダクト性のバランスはとても新鮮に感じました。ただ、この作品にはとても影響力を感じたのですが、他のデザイン画が物語を追いすぎているので、これまでのよさが損なわれないか心配です。
阿部なつみ